モクズガニとギャラリー・いなげ

蒸し暑い季節になりましたね。

ギャラリー・いなげの庭は紫陽花が見ごろです。

 今日は、ライターであり市内に生息する生き物に詳しい大島健夫さんのギャラリー・いなげの生き物紹介第2弾をお届けします。6月26日、以前より話題となっているモクズガニの様子を観察しに訪れてくれました。

ギャラリー・いなげにいるモクズガニは、人の出入りが少なくなった頃、池の隅によく姿を現すので、夕暮れ時に観察を始めました。今回、大島さんは特別に一時水揚げしての撮影を試みました(通常は園内での動植物の採取は禁止となっております)。

その写真がこちらです↓

左側の爪と足が一本ずつとれていますが、また生えてくるそうです(撮影:大島健夫)

 水中で見たときよりも大きく、甲羅の幅はおおよそ6cmくらい。

ギャラリー・いなげで見るモクズガニの中では中ぐらいだと思われます。

そして、今回の観察では驚くことが起こりました…。

 

モクズガニ自ら地上に上ってきたのです。その後、草むらの中に消えていきました…。

それではここから大島さんに伺ったモクズガニのお話です。

 ●yuki:「モクズガニ」という名前の由来はなんでしょうか?

 ●大島さん:はさみに濃い毛が密生しているのがお分かりになると思います。これを藻に見立てて「藻屑」ガニと名づけられたわけです。ちなみに英名は「Mitten crab」つまり「手袋ガニ」といいます。どこの国の人も見るところは同じですが、あちらはこの毛を手袋だと思ったんですね。

最大だと甲羅の幅が8cmほどにまで成長します。雑食性で、小さな生き物から植物性の堆積物までいろいろなものを食べます。

●Yuki:よく池の中の藻を一生懸命食べる姿を見かけますね。ところで、ギャラリー・いなげの池にいるということは淡水の生物なのですか?

 ●大島さん:モクズガニは淡水で暮らすカニですが、繁殖には海が必要です。成熟した個体は海に降りて交尾・産卵し、それが終わると死んでしまうのです。そして子ガニは、少し成長すると川をさかのぼって淡水に戻ってきて、また繁殖の時を迎えるまで淡水で暮らします。寿命はだいたい3から5年程度と言われています。さっきも見たようにモクズガニは陸地に上がることができ、また排水溝などを伝ってかなり遠くまで移動できます。ギャラリー・いなげの池にはかなり多数のカニが生息していることからして、今でもまだ、そうして海と行き来しているのではないでしょうか。

 ●Yuki:それにしてもこの池から海までは約3kmあるので驚きです…。やはり昔、ギャラリー・いなげの目前まで海であったことと関係しているのでしょうか?

 ●大島さん:モクズガニは各地で減少しています。千葉市のレッドデータブックには「A(最重要保護生物)」として記載されています。稲毛の海が埋め立てられる以前は、付近に生息地ももっともっとたくさんあったと思います。開発によって暮らしてゆく場所を失う中で、モクズガニがギャラリー・いなげの池にたまたま生き残り、今でもまだ海と往復して生活史を形成しているとしたら、それはギャラリー・いなげという場所が、人々の思い出の中だけでなく、現実に生物地理学的にも海との接点を失っていないことの一つの証明であり、本当に素晴らしいことだと思います。

 それではまた次回をお楽しみに…。

※千葉市内の野生の生き物についてもっと知りたい方は大島健夫さんのブログへhttp://daylightrambler.blog.fc2.com/

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