いなげ 八景とは

「八景」は、中国湖南省の瀟湘(しょうしょう)地域で「瀟湘八景」と称し水辺の美しい風景を選定されたことにルーツを持ちます。瀟湘八景は山水画の伝統的な画題として親しまれ、その後、各地で「八景」の文化が広まり、国内でも「近江八景」や「金沢八景」など湖岸や海辺の街で八景が作られました。

そこで千葉市民ギャラリー・いなげで開催している「いなげお話し会」の中で、千葉市の郷土史家・西川明先生と地域の方々と共に、かつて海辺の街だった稲毛に想いを馳せながら、稲毛の代表的な8つの風景「いなげ八景」を選定しました。

「いなげ八景」は、新たな稲毛の魅力を発見するきっかけや、街歩きの楽しさを感じる試みとして評価され、「千葉市都市文化賞2017」で、景観まちづくり部門優秀賞を受賞しています。

千葉市民ギャラリー・いなげでは「いなげ八景ツアー&ランチ」の開催や、「いなげ八景水彩画コンクール」を開催し、稲毛の海辺の記憶を伝える活動を行っています。

※「いなげお話し会」は稲毛についての歴史や文化の情報を収集し、地域の方々と語り合う会です。
※「いなげ八景」は2014年12月から2016年12月まで6回開催された「いなげお話し会」の中で選定されました。


第8回いなげ八景水彩画コンクール

稲毛の街中に海の記憶を残す風景を見つけ、絵画表現することで、地域への愛着をより一層深める機会として、同コンクールを開催いたします!ぜひ、ご応募ください。
作品募集期間 : 2024年4月27日(土)~11月30日(土)
作品展示期間 : 2025年1月11日(土)~1月26日(日)

第7回 特別賞受賞作品(一般部門)

市 長 賞
織田豊隆《参道暮色》

理 事 長 賞
伊藤公典《木漏れ日》

稲 毛 賞
佐藤隆《松林の向こうは海の気配》

第7回 特別賞受賞作品(小学生・中学生部門)

市 長 賞
小牧楓花《すてきな建物》

理 事 長 賞
細谷美羽《古池》

稲 毛 賞
島村有未《 神谷別荘秋月》


いなげ 八景紹介

①神谷別荘秋月

 旧神谷傳兵衛稲毛別荘は稲毛に残る唯一の洋館建築です。大正7年、浅草神谷バーや電気ブラン、ハチブドー酒で知られた実業家・神谷傳兵衛は稲毛海岸を眼下に一望できる海岸段丘の上に別荘を建てました。海蝕崖の高台から静かな海と秋月を楽しんだ昔の人を偲びます。

②松林夜雨

 海岸段丘に沿って続く稲毛の松林には、多くの名旅館がありましたが、とりわけ「海気館」が有名で、鴎外や藤村など多くの文人墨客が訪れたと記録されています。今でも松林は稲毛公園として残っており、かつての海風によって根元の砂がさらわれた「根上りの松」をご覧いただけます。雨上がりのしっとりとした園内を散策してみてはいかがでしょうか。

③せんげん通り暮雪

 京成稲毛駅と海水浴場をつなぐメインストリートだったせんげん通り商店街。夏になると海水浴に来たお客さんで賑わい、店先には浮輪や麦わら帽子が並んだそうです。現在、せんげん通りは「夜灯まつり」など地域の活性化に力を入れる商店街として全国的にも注目を集めています。稲毛の積雪は珍しいですが、海で採れるアサリの貝殻が街のあちこちに白く積もっていたそうです。

④浅間神社晴嵐

 大同3年、富士山本宮浅間大社の分霊を勧請したと伝えられる由諸ある神社です。海の中に建っていた「一之鳥居」が有名で、夏の例大祭ではボートを並べた舟橋を渡って参拝するのが正式だったそうです。海が陸となった今も一の鳥居は国道14号線沿いにたたずんでいます。

⑤ゆかりの家夕照

 昭和12年に半年ほど中国清朝最後の皇帝・溥儀の弟、愛新覚羅溥傑氏と嵯峨侯爵家の長女浩氏が新婚生活を送った家屋が稲毛にあり、保存・公開されています。元は大正2~3年頃の水飴商・鈴木氏の別荘だったそうです。保養地稲毛の夕照、そして清朝の夕暮れを見つめた建物かもれません。

⑥稲毛海岸帰帆

 遠浅の海では底が溝状に深くなった「澪(みお)」を通って船が行き来していました。海岸を埋立てたこの辺りには今、千葉トヨペット本社があります。当初は明治32年、日本勧業銀行本店として東京の麹町区に建てられ建築物で、その後谷津遊園、千葉市役所など幾度も移築を重ねてきました。明治の建築家・妻木頼黄氏と武田五一氏になる流浪の名建築はようやくこの地に帆を降ろしました。

⑦白砂落雁

 民間航空の先駆者・奈良原三次氏は、潮が引くと固く締まる稲毛海岸の砂浜に着目し、明治45年に全国発の民間飛行場「稲毛飛行場」を開設します。その後白戸栄之助や伊藤音次郎など多くの飛行家を輩出しましたが、大正6年に高潮の影響でその歴史を閉じました。飛行場のあった辺りの稲岸公園には「民間航空発祥之地記念碑」が設置されています。

⑧千蔵院晩鐘

 千手寺と南蔵院が明治42年に合併して始まった真言宗豊山派のお寺です。残念ながら梵鐘は戦時中に教出されてしまいましたが、山門に佇むと鐘の音が聞こえてきそうです。千蔵院のある周辺は本郷と言われ、旧家のお屋敷や漁村らしい入り組んだ細い道など古くからの街並みが残っています。