1月20日~2月7日、「NARAMIX 佐藤央育2人展―生命の童話、静寂の物語―」を開催しました。

ギャラリー・いなげでは、以前より千葉にゆかりのある期待の作家さんの企画展を積極的に開催しています。今年は、千葉市芸術文化新人賞を平成25年度に受賞したNARAMIX(ラナミックス)さんと平成26年度に受賞した佐藤央育(えいすけ)さんの初のコラボレーション展となりました。
NARAMIXさんと佐藤央育さんはどちらも千葉市出身の美術家のお二人です。
NARAMIXさん
佐藤央育さん
生命感あふれるドローイングや水性木版、油彩を中心に制作するNARAMIXさんと緻密で静謐なテンペラ油彩混合技法を得意とする佐藤央育さんは、確かな技術で制作に取り組みながら、その一方で他の様々な表現にもチャレンジしています。
NARAMIXさんの出品作品群<蔵識>水性木版、廃襖、和紙。DNAや細胞をイメージした版画作品。襖に和紙を張って、刷った大作です。
<偽カテゴリ、マニュアル、ステータス>水彩木版、揉み紙。NARAMIXさんの分身のような「鳥人間」が木版で表現されている。
<果実>油彩、メディウムプリント、ベニヤ板。旧神谷別邸に展示された作品は、ワイン王と呼ばれた神谷伝衛兵にちなんで葡萄が描かれている。
<去る>油彩、ベニヤ板。NARAMIXさんが風邪をひいたときに制作された作品。風邪ウイルスがモチーフになっているそう。
<回復>油彩、ベニヤ板。<去る>と対になる作品。油彩作品の多くは、他の作品にで使用した版木のシナベニヤが用いられています。
<印象VS(ヴァ―サス)>水性木版、ミクスドメディア。目玉が刷られた作品細部。筆あとのように見える黒色部分は細部まで木版です。
<ジャッカロープ>油彩、ベニヤ板。ジャッカロープは角の生えた兎の形をとるという未確認生物の名前。
<壇に祀る周期、原型C>水性木版。神谷別邸の床の間に映えていました。
<蔵識>の細部。大胆なタッチの黒色の木版と背景の緻密な模様の版の対比が印象的でした。
<狼と共に吠えねばならぬ>ビデオ作品。「鳥人間」に扮したNARAMIXさんが留学先のパリの街を一日歩く作品です。
上はNARAMIXさんの出展作品です。幼いころから絵を描き続けているNARAMIXさんは、鳥や生き物から得たイメージをドローイング、油彩、水性木版画、立体、映像と、どんどん広げて表現し、ついには自身が「鳥人間」になるパフォーマンスまで行っています。翼を得て自由にアートの大空を飛び舞う魅力的な作家です。
佐藤央育さんの出品作品群。<しらこばと><あおばと>板、麻布、石膏、墨汁、膠、テンペラ、油彩。佐藤さんが描き続けている様々な鳩のシリーズ。デザインされた形と羽毛の質感が印象的です。
<陶の鳥>陶土、真鍮、木、藍染料、漆他。佐藤さんが全国各地で収集している様々な土と釉薬の違いがおもしろい陶芸作品。
<蝸牛>陶土、顔料、漆。神谷別邸の床の間に展示された陶のカタツムリは表面に水気を帯びています。
<白い鳩>木、真鍮、麻布、漆、エナメル塗料。神谷別邸の階段に展示された作品は鳥籠まで手作りです。
<木>麻布、白亜地、墨汁、膠、テンペラ、油彩。木の表面の質感が作品によって異なります。
卵と顔料でつくるテンペラ絵具や油彩のほか、墨汁や膠絵具など様々な絵具を薄く何層にも重ねて描く木肌は浮かび上がってくるよう。
<アロエ>麻布、白亜地、墨汁、膠、テンペラ、油彩。
<陶の鳥>は庭園や洋館など様々なところに展示されました。
<蟷螂と蝶>板、和紙、白亜地、墨汁、水彩、テンペラ、油彩
<木>麻布、白亜地、墨汁、膠絵具、テンペラ、油絵具。
上は佐藤央育さんの出品作品です。佐藤さんは鳥や木などをモチーフに、主にテンペラ混合技法で描いていますが、陶芸で立体作品にすることもあります。また、各地域の「土」から絵具を精製し、その風土に即した画材の研究も行っている。穏やかにジャンルを超えながら、技法を鍛え「表現」の本質を追及する姿勢が、緻密で静謐な作品から十分に伝わってくる作家です。
第一展示室はお二人の専攻である木版作品とテンペラ・油彩作品が展示されました。少し薄暗く、緊張感漂う空間になりました。
第二展示室はNARAMIXさんの油彩と版画作品を展示。勢いのある作品が、低い位置・高い位置にそれぞれ展示され、視線が上下左右に動きます。
日差しの入る明るい第三展示室は、平面作品の他、立体作品やビデオ作品も展示されました。
第三展示室では一つの壁面に二人の作品が並んで展示されました。佐藤さんの<木>とNARAMIXさんの<モノケロース(ユニコーン)>。
旧神谷別邸の和室にも作品が。床の間にはNARAMIXさんの丸い木版と丸いカタツムリの陶芸が共演しました。
当初は佐藤さん、NARAMIXさんで部屋を分けることが予想されましたが、長い準備期間中、お互いに共通点や相違点を探っていただき、結果、一つの空間に二人の作品が響きあうような展示となりました。「物語を感じさせるような、楽しい展示にしたい」という二人の思いから、部屋ごとに違った展開がみられるよう展示方法も工夫されています。
鳥人間になったNARAMIXさんのライブペインティング。墨や鉛筆、サインペンなどいろいろな画材で描かれました。
ギャラリートークの様子。佐藤さんが制作に使用しているテンペラ絵具をその場で作ってくれました。
佐藤さんが絵具や陶芸に使用している土のコレクションも見せていただきました。
佐藤さんが使用する筆や刷毛など
NARAMIXさんが彫った版木。
NARAMIXさん手作りのバレン。
2日間のライブペインティングで完成した<自画像鳥人間エゴ・エクスペリエンス>
1月24日、31日には、NARAMIXさんのライブペインティングと佐藤さん・NARAMIXさんのギャラリートークも行いました。詳細は写真のキャプションをご覧ください。また、以下よりNARAMIXさんのライブペインティングの様子を動画でご覧いただけます。
今後のお二人の活躍にどうぞご期待ください。