だいぶ暑くなってきましたね。ギャラリー・いなげの庭園入口には野ばらが咲き始めました。
今回は先週当館で開催した2つの展覧会をご紹介いたします。
【濱田芳久展】
千葉県で活動する美術団体「平成美術会」のメンバー・濱田芳久さんによる個展が開催されました。大学時代から現在に至るまで描き続けてきた油彩画を中心に、日々描いているスケッチや陶芸作品もあわせて紹介され、濱田さんの多方面に渡る創作活動の一端をうかがうことができました。
今回はそのうちの一点をご紹介します。
≪こころの棚Ⅰ≫という作品です。描かれた棚の中には石膏像の頭部や仮面のようなもの、中にはかわいらしいクジラの置物まで、あらゆるものが置かれています。表面は暗く落ち着きのある色で描かれていますが、作品に近づくとその下から鮮やかな青や黄色などがのぞいているのもわかります。
学校の美術教育に携わっていた濱田さんは、久しぶりにある小学校の図工室を訪れたとき、棚の中に置かれた子供たちの作品から、彼らの心が感じられたとおっしゃ¥っています。その棚を描くことを通して、子供たちの心をどう表現するかにとても苦心された作品とのことでした。
【第9回十美会展】
生涯学習施設「千葉市ことぶき大学校」美術学科の第10期卒業生のみなさんが卒業後に結成した絵画サークル「十美会」の展覧会です。会場には計62点の油彩画作品が並びましたが、どの作品もメンバーそれぞれのモチーフや作風がよく表れていました。
今回のその内の2点をご紹介します。
1点目は山口忠彦さんの≪辺 ほとり≫という作品です。
川の岸辺を、夕日に照らされた水面とうっそうと茂る葦に焦点を絞り、緻密に描きこんでいます。写真と見紛うほどに繊細に描かれたこの作品は、描いた画面に水をかけてぼかし、ぼやけた画面に再度細かく描きこみ、また水を乗せ…という気の遠くなるような工程を繰り返して制作されたそうです。この川は、山口さんがよく出かける市内の花見川を描いたもので、夕日に照らされた水面の美しい色がとても印象に残ったそうです。作品をよく見ると、あえて水面だけは緻密に描くことよりも、そのときの水辺の色や光の印象を大切に描いているのがわかります。
2点目は齋藤守弘さんの≪記憶される風景≫です。
ご存知の方はすぐにピンときたかもしません。
佐倉にあるDIC川村記念美術館とその庭園を描いた作品です。
部分部分の緻密さ、均一に施された彩色、整った構図など…非常に几帳面で独特な作風を生んでいます。また、右下から伸びた木の枝は左の方へずっと伸び続けていくかのようで、どこか現実ではない幻想世界を思わせるようでもあります。川村美術館は、斎藤さんがよく訪れる場所で、目をつむっていても思い出すことのできる記憶の中の風景なのだそうです。
それでは今日はこの辺で…失礼します。
yuki